栃木県「有識者会議」広聴会に対する市民団体からの質問
2月11日に開催予定の「放射線による健康影響に関する有識者会議」広聴会への事前質問締切が今日でした。
「放射線による健康被害に関する学習会」を続けている市民から以下のような事前質問を送付しました。
座長 鈴 木 元 様
「放射線による健康影響に関する学習会」参加者一同
原発震災から子どもの未来を考えるネットワーク
低線量被曝を考える講座実行委員会
放射能から子供を守る会・塩谷
放射能から子どもたちを守る ひまわりとちぎネット 小山の会
放射能から子どもたちを守る ひまわりとちぎネット 壬生の会
ママたちでつくるセーフティネット@とちぎ
放射線による健康影響に関する有識者会議の広聴会にあたっての質問
1. 昨年12月に二本松市の新築マンションに汚染コンクリートが使用されていることが明らかになりました。ご存知のように、福島県が小中学生を対象に実施した積算放射線量調査によって「偶然」発見されたものです。
これは、福島県が震災後の5月という早い段階で「建築資材の放射性物質の基準を設けるよう」国に求めていたにもかかわらず、何ら対策をしなかったために起こるべきして起こった事件です。
なぜ、国が動かなかったか。1月24日付の読売新聞朝刊の記事によると、省庁幹部「まさかあの間隙をぬって砕石が出荷されているとは思いもしなかった」という、あってはいけないはずの「思い込み」から発生しています。
これ以外にも牛肉の稲わら問題や、静岡のお茶などでもわかる通り、今回の原発事故による影響は既存のデータや常識で考えていても想像できないような発出の仕方をしており、行政や学者、あるいは県民の「思い込み」がどんなに危険なのかということを物語っています。
それを未然に防ぐ、またはそれを注意喚起し、安心を与えてくれるものがデータです。二本松市が福島県の調査の結果を受けて、独自に被ばく積算放射線量の調査をしていなければ、いまだに汚染コンクリートの問題を全国に投げかける機会を失っていたかもしれないのです。
出るかもしれないし、出ないかもしれない。しかし、とにかく、測ること、公表すること、それを続けること。専門家が適切なアドバイスをすること。そして、自分で判断すること。これ以外に放射線防御の方法はないのではないでしょうか。
汚染コンクリートだけでなく、がれきの問題、汚泥の問題、焼却灰の問題、食物の問題、原発で異常が起こっていない(と発表されている)のに増えた放射性降下物の問題。いまや、原発からの物理的な距離や空間線量だけでは推し量れない汚染が全国にばら撒かれているからこそ、測ることでしかわからないことがあるのではないでしょうか。
文部科学省は、福島原発から放出される放射性物質の量が減少していることから、昨年12月22日に放射能モニタリングの見直しを行い、それに伴い栃木県でも放射性降下物の測定が1回/日から1回/月になりました。しかし、時期を同じにして福島市で放射性降下物の測定値が増加しました。私たちは、県に測定の再開を要請し、現在、検討をしていただいています。仮に、測定の結果が「ND」であれば、それは私たちにとって「安心の指針」となり、一方、何らかの値が検出されれば、それぞれの判断で被ばく対策のための有効なデータとなります。このように、測定による生のデータは、私たちにとって生活を営んでいくうえで極めて重要な役割を果たしています。
2.以上の点を踏まえて質問をしますが、その前提として、私たちの有識者会議での議論の受け止め方を示しておきます。
⑴ 有識者会議は、①福島原発事故による放射性物質の流失が、県民生活に多大な影響を与えているため、②県民の不安払拭のため、③⒜県としての対策、⒝県民への情報提供をするため、本県に即した提言を受けるために設置されたとのことです(第1回有識者会議における県のあいさつ)。
⑵ 有識者会議の結果、また、これまでの委員の講演等の発言からみると、有識者会議は、栃木県における放射線の健康影響について、大きな影響がないとの認識を前提にしているかのように思われます。
その根拠は、大要①疫学的調査の結果、年間100ミリシーベルト以下の被ばく量では、健康被害への顕著な影響が確認される有意なデータが得られない(香山委員、菊地委員講演)、②チェルノブイリ原発事故後の様々な症例報告については、疫学的証明が得られていないことを理由に、少なくとも現在においては(ヨウ素による)小児甲状腺がん以外の健康被害は証明されていない(香山委員、鈴木座長講演(もっとも、香山委員は、疫学的証明の範囲と限定し(芳賀町主催講演)、鈴木座長は、チェルノブイリでの健康影響について、時間的な問題から結論を留保しています(医療ルネッサンス小山等)ので、現段階での知見という意味かと思われます))、③シュミレーションによると、栃木県のヨウ素の被ばくは少量に留まっている(鈴木座長講演、同第2回有識者会議資料)、④急性被ばくと比較して遷延被ばくはリスクが小さい(鈴木座長講演)、⑤内部被ばくのリスクは、外部被ばくと比較して同じ(鈴木座長講演)、⑥DNAは損傷を受けても修復機能があり、ダメージが少なければ影響がでない(少ない)(鈴木座長、香山委員講演、菊地委員監修放射線の影響に関するQ&A)、⑦自然界の放射性物質と人工的な放射性物質のリスクは同じ(香山委員講演)、⑧喫煙等他の健康影響と比較して(栃木県における)放射線の健康影響のリスクは小さい(香山委員、菊地委員、鈴木座長講演)等の点にまとめることができると考えます。もっとも、魚介類の食物連鎖による放射性物質の濃縮については、否定(香山委員芳賀町主催講演)・肯定(鈴木座長みんなの党主催講演(矢板市))と、委員間においても見解の相違があるようです。
そして、(ⅰ)⒜上記①の疫学的な見地に基づくデータ、⒝核実験等による放射性物質摂取の影響の程度、⒞放射性物質以外の有毒物質の摂取による影響との比較、または類推からすると健康影響はない(また、少ない)、(ⅱ)喫煙等の他のリスクと比較した場合でも、健康影響のリスクとして許容範囲である、とまとめることができると考えます。
⑶ つまり、有識者会議の目的は、栃木県における放射性物質による健康影響の有無を判断することよりも、健康影響がない、または少ないことを前提に県民の不安の払拭に趣旨の重点がある、と思われます。
しかし、質問において後述するように、低線量、または素線量の被曝による健康影響がない、または少ないことを前提にすることは妥当でないと考えます。
健康影響を最小限に抑えるためには、危険を合理的な範囲で最大限に見積もり、対策を立てることが必要と考えます。例えば、東日本大震災の津波の避難においても、経験則だけではなく、危険を最大限に見積もった避難が効果的だったことが明らかになっています。
そのためには、正確な情報の迅速な公開が必要だと考えます。ただし、放射線による健康影響については諸説があることからも、リスクを許容するか否かの最終的な判断は本人に委ねることが原則であることから、評価の入らない生の情報提供が必要です。しかし、震災以降、行政、とくに国の対策は、住民のパニックや不安の増長をおそれ、情報提供が遅れ、ひいては、そのことが行政に対する不信感をもたらしました。
もっとも、環境中の放射線量の測定と情報公開については、有識者会議も積極的に取り組む姿勢をとっていますので、私たちとの相違点は、もっぱら「危険の見積もりの程度」にあると考えます。しかし、「危険の見積もりの程度」は、測定の範囲や期間、あるいはどこまで個人の健康影響にまで踏み込むかなど「測定の程度の問題」として現れてきますので、このことを議論することは重要だと考えます。
このような認識を前提に、以下質問をします。
3.質問項目
質問1
DNAレベルにおける放射線の影響は、現在の科学的知見では未解明な部分があり、とくに、二本鎖切断の修復過程においてパリンドローム増幅などの修復エラーが発生し、数個の変異で十分がんが発症する危険性も指摘されています(児玉龍彦「“7q11変異”—チェルノブイリ癌で見つかった被曝の足あと」(『医学のあゆみ』Vol.238 No.12 2011年9月)、花岡文雄「DNA損傷とはなにか―二本鎖切断の危険性と個人差」(『科学』Vol81 No.11、2011年11月))。
この点について、疫学的証明の見地から評価すれば証明されていない事実となりますが、疫学的証明はあくまで経験値に基づく統計に依拠するもので、未解明の事象を解明する方法ではありません。そして、2000年のヒトゲノム解読以降、遺伝子に対する障害の分子機構の解明が画期的にすすんだことを考えると、疫学的な見地だけでなく、病理学的解析も交えての議論が必要だと考えます。
そして、①このような未解明な事象がある、②健康影響は個体差があることからすると、栃木県における被ばく量であっても、将来的な健康影響については、「わからない」としかいいようがないのが現状であり、早急な結論を下すべきでないと考えます。健康影響の対策、その前提となる調査も、この「わからない(だからこそ測定)」ことを前提として実施されるべきだと考えます。
そこで委員それぞれのご意見を伺いたいのですが、上記のような現在の科学的見地で解明されていない事象があることを前提にした場合、“人体の修復機能”をすり抜けるDNAレベルにおける放射線影響について、どうお考えでしょうか。
質問2
現在、測定の対象となっている放射性物質は、ヨウ素とセシウムのベータ線核種です。内部被ばくにおいて影響の大きいプルトニウム等のアルファ線核種は、放出の量が少ないこと、放出されても福島原発の近隣に留まっていると推定されていることから検査の対象となっていません。また、骨への蓄積が指摘されているストロンチウムは、セシウムの量から推定されるとされています。しかし、前述のように、放射性物質の移動は、一次的な大気中への放出のみではなく、様々な形態による二次的な移動もあります。また、ストロンチウムとセシウムは、物質の性質上、蓄積する部位が異なるため、食物連鎖による蓄積がされた場合、必ずしも放出された割合と蓄積された割合が比例するとはいえないという問題があります。
そうしたことから、ヨウ素、セシウム以外の核種の測定の必要もあると考えます。この問題は、リスクコミュニケーションの問題としても重要であると考えます。
頻度など具体的な問題は留保するにしても、ヨウ素とセシウム以外の測定の必要性はあるとお考えでしょうか。また、ないと考える場合、その理由をお聞かせください。
質問3
香山委員は、「体内にある自然界の放射線物質と人間が作った放射線物質の健康影響への差はありません。」と述べています(宮城県山元町主催の講演会における質疑)。ここでは、放射性物質の出す放射線の影響という趣旨で発言されていると推測しますが、自然界の放射性物質(例えば、カリウム)と人工的な放射性物質(例えば、セシウム)では、体内への蓄積・排出までの期間・移動状況が異なるとの見解もあります(第4回低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ(2011年11月25日)における児玉龍彦東京大学先端科学技術研究センター教授のプレゼンテーション参照(http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg5573.html?t=68&a=1))。質問1とも関連する分野の質問となりますが、例えば、分子生物学のような専門分野における自然界の放射性物質と人工的な放射性物質の人体に対する影響、蓄積効果などの異同については科学的な証明がされているのでしょうか。他の委員も含めて考えをお聞かせください。
質問4
前述のように、魚介類の食物連鎖による放射性物質の濃縮について、鈴木座長と香山委員の見解が異なっています。
⑴(鈴木座長、香山委員への質問)それぞれ、どのようにお考えでしょうか。
⑵(全委員への質問)食物連鎖がある場合、とくに魚介類の測定は重視される必要があると考えますが、いかがお考えでしょうか。
質問5
市民団体等が主催した講演会では、低線量・素線量による健康影響は、①晩発的なもの、②がん以外の可能性もあることが指摘されています。そのため、ホールボディカウンターで計測できる「高い」被ばく量は健康影響の指針とはならず、むしろ継続的な尿・血液検査、子ども場合は乳歯の放射線検査、心電図等の検査が有効な指針になる可能性があるとされています。
そこで、以下の点について質問します。
⑴ 福島原発の事故に関連する放射線による影響は、がん以外には可能性がないとお考えでしょうか。
⑵(鈴木座長に対する質問)第2回有識者会議において、鈴木座長が「内部被ばくの評価には蓄尿よりもホールボディカウンターが有効」(委員の発言は、県により結果が公表されていないため、傍聴者のメモによりますので、発言の趣旨が正確に捉えられているか未確認ですので、それを前提としてください。以下同。)と発言していますが、その理由をお聞かせください。
⑶(有坂委員に対する質問)第2回有識者会議において、有坂委員が「甲状腺ホルモン値の異常でがんを見つけることはできない。エコーでもそう」と発言しています。放射線による将来的な影響という意味で、甲状腺癌に対する有効な検査方法はどのようなものでしょうか。
⑷ これまで述べたように、放射線の健康影響については未解明な部分があり、長期にわたる調査・観察が必要になるため、長期的な施策の必要性があると考えています。その意味で、現在の被ばく量によって健康影響を推し量るだけではなく、長期にわたる健康影響調査が必要だと考えます。
将来の影響がわからない状態で、10年〜30年後を見据えた健康調査について、①必要性、②検査方法についてどうお考えでしょうか。
質問6
県は、第2回有識者会議において、「給食の陰膳方式の検査で高い値が出た場合はどうするのか」という有坂委員の質問に対し、「管理されたものが流通しているので犯人探しは考えていない」と回答しています。これは、質問に対する回答になっていません。
検査の結果、高い放射線量が観測された場合、対策を講じるのは当然のことと考えますが、委員においてはどう考えているのかお聞かせください。
以上
